削れた青い、

かなり前の話しになるが、ある日100円玉を拾った、お金を拾ったのは何年ぶりだったか。100円ぽっちでも見つけたときは妙に嬉しかった。しかし同じ日、今度は靴の中に100円玉を発見する。そのときはまだ、こんな軌跡的なこともあるのか、と喜んだ、が、3回目でおかしいと気づく。案の定、ポケットに小さな穴があいてる。
履いていたのは高校の時に買ったGパン、もう4〜5年経つ。ひざにも穴があき、ヒゲのラインもだいぶほつれてきてる。
ポケット部分にある財布の形した色落ち。工場で流れ作業のバイトをしたときに出来た不自然な場所にあるボロ。長年を共に生きてきたGパン。今年のゴールデンウィーク、Gパンの退職記念に旅行をしてあげた。さよなら、さよなら、さよなら。
そしてパンツが一本しかなくなり、最近ちょうど寒くなってきた。ネットで掛川のGパン屋を探した。駅前に一店見つけ、行ってみた。のが今日23日。
ガラス張りの店で外からGパンの棚が見えた。店内に入る、他の何にも目もくれずGパン棚へ向かう。
遊んでエンジーンズでも買ってみよかとも少し思ったが、やっぱりお手ごろなドゥニームを買おうと決めていた。ドゥニームの棚を眺める。一番安いモデルに手を伸ばす。そこへタメくらいのあんちゃんが接客してきた。
「何かお探しですか?デニムですか?」
「ええ、Gパン欲しくて。。これ(一番安いモデル)あたりいいっすね、あんまり太目じゃないのいいんすけど。。」
「デニムだと、細めはこちらですね」
と少々高めのモデルを指す。ちょいと待った、何かおかしい。高めのモデルをすすめるのはあってる、それは店員として大正解だ。そうじゃない。問題はそこじゃない。こやつDENIMEのことをデニムとよんでいる。うーん、DENIMEってドゥニームだよね。ですよね?違う?「デニム」っても読むん?
会議
右脳「いいじゃないかそんな小さなこと」
左脳「なに言う、こいつGパン屋の店員でっせ、そんな立場のやつが名前間違えている、こんなとこで買うのはやめましょうぜ」
右脳「小さなことじゃないか。第一おまえ、本当にDENIMEをデニムと読まないと言い切れるか?」
左脳「バカな、俺はそんなの聞いたことない。それだったら呼び名が2個あること自体おかしい、そうだろ」
右脳「私に口答えするな」


「あの、、、これで良いです」
結局安いモデルを買うことにする。頼りないそのあんちゃんに洗うとどれくらい縮むのか聞こうと思ったとき、あごヒゲを蓄えGパンをかっこよく着こなしたナイスミドルが現れた。店主のようだ。ああ良かった、話しがわかりそうだ。
「これどんぐらい縮みます?」
「あぁ、すごく縮むよ、デニムは」
オッケー、「デニム」で、よい。問題ない。
その後ナイスミドルは細かく洗い方などを教えてくれた。洗うときは裏返しにする、洗剤は使わない、などなど、学生時代の僕が持っていたGパンに対する愛情がそこにはそのまま残っていた。そんなところで時間の流れを実感し、少し昔を懐かしみ、やはりDENIMEはドゥニームでしかないことを再発見した。最後にパッチをよく確認し、お金を払いました、とさ。